税理士業はサービス業。形ある商品を売っているわけではありません。
税理士としてサービスを提供するために、何をどれだけ仕入れたか。
どんな質と量の(自己)投資をしているか。棚に並んでいるわけではないので、見えないです。
見えないけれど、自分自身はよーくわかっている。お客様にも、遅かれ早かれわかるもの。
仕入を怠って平気になってしまうこと、それが一番怖いです。
税理士としての”仕入”はいつはじまったか
簿記を学び始めたときは、税理士になることはまったく考えていませんでした。
経理の仕事をしようとも思っていなかったです。
貸借、損益、貸方と借方。深い意味もあまり考えず(わからず)、
ほとんどゲーム感覚で学んでいました。
仕事のために覚えなくては、資格を取らなくては、という思いがなく、
ただ新しい世界が広がっていくことが面白かったです。
それまで長く勉強から離れていたということも大きく影響していたと思います。
頭も身体も新しい知識や世界を吸収をしたがっていた。
スポンジがカラカラだったといいますか。
子どもが遊びに夢中になるようなもので、まったく苦ではなかったです。
もちろん、難しさを感じたり、試験前の緊張はあったけれど。
2級に合格したとき、もっと簿記を学びたいなと思って、独学で1級の勉強をはじめました。
そのときやっと(?)税理士という職業を意識しました。
1級を取ったら、税理士試験の受験資格となる。
そんなに簿記が好きなのだったら、その道を進んでみようか、と。
税理士の実務があまりわからず突き進み、それは後々働き始めてからハードルになったの
ですが……それはまた別の機会に書きたいと思います。
税理士となった今となれば、税理士になることを決める前の、簿記3級の勉強をするときから、
税理士としての”仕入”は始まっていたことになります。
お客さんを意識しなくても、職業を意識しなくても、自分の中に”いつか誰かの役に立つための
仕入(準備)”は始まっていたのです。
仕入や投資への情熱が失われるとき
売れ残った在庫商品が流行遅れとなり不良在庫と化したり、
設備が耐用年数を過ぎて買替えの時期になったり。
税理士の仕入や投資も、同じようなことがあります。
知識や経験は、一度仕入れたら終わりではありません。
税制は毎年変わります。
新しい事業の仕組みが生まれたり、新しいサービスが生まれたり。
景気も、人の価値観も、世界の情勢も。ありとあらゆる変化があります。
知識や経験のアップデートがないと、対価をいただく価値のあるしごとはできません。
私が怖いのは、仕入や投資をする情熱が失われることです。
時間がないから仕入をしないのか。情熱がないから仕入をしないのか。
両方だと思います。負の循環。
目の前の仕事をなんとか期限までに終わらせることに追われてしまうと、
自分の中にある知識や経験をただただ消費していくだけになります。
しかも、劣化した古い在庫を消費して提供している状態。
そして、だんだんと空っぽになっていく。
いままで通り、毎年同じでいいですよ。
と言われたら、あえて負荷をかけて学んだり、新しいものを提供しようという
意欲はわきません。古い設備でも、なんとかまかなえてしまう。
あえてお金をかけて、新しい投資をしなくても、仕事になってしまう。
そして、学ばない・仕入れない・投資しない、が常態化してしまうのです。
ああ、怖い。
たとえ、それでお客様がよしとして対価を払ってもらえていても、
自分自身が消耗し、情熱が失われてしまいます。
そしていつか、そう遠くない未来に、お客様もよしとしなくなります。当然。
ゆでガエル理論のように。
誰のせいなのか。自分のせいです。
環境に甘えてため息をついていても、
誰かが「はい、情熱です。どうぞ」と持ってきてくれはしません。
自分が好きになれないものは売れない。自分の心が踊る投資を
頼まれたから仕入れる。頼まれないから仕入れない。
時間があったら勉強できるのにな、という言い訳。
まったくもって受け身であり、義務感がありありです。
簿記を学んでいたときの、わくわくした気持ちを『初心』として忘れたくないです。
税理士試験も、税理士になるためではあったけれど、5科目をとる長丁場を支えていたのは
税務という新しい世界を知る面白さでした。
誰かに頼まれたわけでもなく、お金のためでもなく、新しい世界を知る面白さ。
税理士としてお客様のために会計や経理、税務について伝える、サービスを提供するときに、
私がわくわくして仕入れたものでないと、売ることはできません。
もちろん、好きなものだけを好きなように売っていても成り立たないです。
税理士も、マーケティングとは無縁ではいられません。
でも、まずは自分が面白い、わかりやすい、使いたい、と思えるものを探求していき、
それを誰に、どう届けるかを考えていきたいです。
世界に数人、十数人くらいは、私がわくわくするサービスを欲しいと思ってくれる人が
いるはず、と思って。
そして、会計や税務の知識だけではなく、遊びも、日常生活も、すべてが仕入。
毎日を面白く生きることが、何よりの仕入と自己投資。
面白く遊ぶのは実はとても難しいので、遊ぶ技術も錆びないように鍛えましょう。
【編集後記】
旅も、遊びも、計画・準備をしているときが一番楽しい。
近々あるのは、大切な仲間の誕生日。作戦会議がはじまります!